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経営者の人生はファミリービジネスとしての永続性が大事だと思います

公認会計士・税理士  佐久間 将司(さくままさし)さん

Photographs by Kai Kiuchi
  

PROFILE

EMZ株式会社 代表取締役社長 税理士法人 代表社員

監査法人トーマツ、東京共同会計事務所、HSBC証券、JPモルガン証券等で国際監査業務、デリバティブ、流動化等に関する会計税務コンサルティング、 SPC の組成及び事務管理業務、国内及びクロスボーダー M&A 等のファイナンシャル・アドバイザリー、株式及び転換社債などの資金調達等幅広い業務に従事。
2009 年 3 月、EMZ設立( ( 株 ) サーダ・パートナーズの事業を承継)、代表取締役社長に就任。 慶應義塾大学商学部卒業、日本公認会計士、税理士

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Q.経営者のお手伝いをされたいと思ったきっかけは?

A.ある創業者の方とお仕事をしたとき、傍で拝見していて、自分の会社のことと家族のことを総合的に考えてくれる人が世の中にいないんだなと感じました。一般的に言っても会社のことは一生懸命考えるのですけれども、家族のことをちゃんと考えている日本の経営者はそんなに多くはないと思います。仕事の7,8割はほとんど会社に向けられていて、残った時間の一部を家族にあてている。自分の財産をどうしていくとか、それを誰に相談すればいいのか、なかなか考える余裕がない。それであればそういう仕事を自分がやろうと思ったのがきっかけですね。以前は、顧問税理士が税務延長上で断片的に経営者の相談に乗ってきたようなことが、単に税務だけで問題が解決されるような単純な時代は終わったと感じることも影響しています。

Q.経営者の仕事に魅力を感じて、そのサポートをしたいと思われたんですね?

A.仕事をどれだけ本気で考えられるかというのは、自分が直接的な責任を負う経営者にならないとわからないと思います。洋の東西を問わず、経営者が財をなし、事業を育て、それを引き継いだ人がその思いを育て、財をどれだけ引き継いでいけるかにかかっています。その思いを引き継げるか、自分のものとしてとらえられるか、本気になれるかということだと思うんですよね。

Q.海外でもあるようですが、昔から日本も三代続いたら財産がなくなるといわれています。こういう税制についてはどうお考えですか?

A.三代で財産がなくなるというのは、日本では会社=個人でずっときたからだと思います。だから税制も法人にも重く、個人にも重く課す。会社は一代では育つんですけれども、二代目以降は育たせないような環境をつくってしまった。それがたまたま税制にも表れているだけで他の面でもいろいろあると思いますけれども。

Q.このシステムはこれから変化すると思われますか?

A.相続税をシンプルにしよう。もっと税率も下げて複雑な税体系をやめようとか、法人税を下げようとか。最近では同族会社の役員報酬の損金の限度額を撤廃したり、贈与の枠が増えるとか。会社も個人も分かれてきているのだし、財産を作っていかないと日本で税金を納められないしいい人が育たないという意味で、わかりやすく簡素になっていくと思います。もちろんこれには悪い側面もあって、税金を簡素にして引き下げると財を作れる人と作れない人の差が激しくなる。貧富の差が拡大するので、社会的には不安定になるという要素はありますが、その分いい人が育つ素地はできてくる。

Q.会社と個人を分けて考える時代に合わせ、税制も変われば社会は活性化するのでしょうね。

A.そうですね。ただ、税金のことだけで会社の経営、個人の財産を守るというのは限界があります。ですから自分たちの持っている限界をどういうふうに補完していくかが重要だと思います。税金のことを365日考えている社長はいませんから、会社のことや家族のことが心配でその中でお金のかかること、税金のことが出てくる。総合的に考えないとその方々の役に立たない。

Q.それで佐久間さんはファミリービジネス・コンサルティングという事業コンセプトをお持ちなんですね。これは具体的にはどういうものですか?

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A.アメリカにはファミリービジネス・コンサルティングという名前の会社もあるほど普及しているのですが、グループ内に弁護士や経営のことを考える人がいて、税務のみならず法務、リーダーシップ、心理学、組織論、教育などの専門家を投入して、一族のために次世代に続がるファミリービジネスのソリューションを提供する仕事です。
一番難しいのはファミリーの利害をどう扱うか。会社とそのファミリーの利害を明確に理解して、それをどう調整していくかというのがとっても大切なことだと思います。財産をつくった方は、会社の方向性や自分の財産を守る方向性をすべて自分で取り仕切ってきたから、ぶれることがあまりない。しかし、それを引き継ぐ人間はだいたいぶれるんです。違う思惑が働くんですね。それを明快に整理して第三者的にアドバイスするのはとても重要なことです。
そういう仕事をするのは、一族と利害の無い第三者の方がいいのだと思います。

Q.なるほど。

A.それは理想論ではあるんですけれど、皆さんの思惑を明確に理解して、たとえ不平不満が出たとしても誰かにとってものすごく不利益が出ることがないような状態をつくる必要があります。日本人の性質として欧米人のように自分の思っていることを明らかにして、それをもとに何か解決策を練るというのはとても難しい作業だと思うんです。ただ、それがだんだん求められてきているのだと思います。ここ数年の老舗同族企業の問題などを見ても、この解決をしっかりすることが重要だと感じています。

Q.家族のあいだの問題に切り込んでいくという大変難しい仕事ですね。

A.そうですね。日本でもこれからはわれわれ会計士や税理士が、税金という枠にとらわれず、家族、会社をどうやって守るかという発想に変わっていくと思っています。

Q.こういうソリューションは富裕層に特化して提供されるのですか?

A.会社の経営者イコール富裕層であればそうなります。日本の場合は資本家、労働者というのが明確でないですね。欧米なら資本家が富裕層で、会社を任されている経営者が富裕層かどうかわからない。今後も同族会社が多い日本では会社の経営者が富裕層ということになるでしょう。

Q佐久間さんはこれからは「相続から事業継承へ」時代は変わるともおっしゃっていますが、それはどのような意味ですか?

A.相続と言うのは資産の中に会社の株が結構含まれていたとしても、あくまで個人のものですよね。個人で財産を形成していない方はたいてい資産のほとんどが会社の株です。一部個人で持っている不動産があるくらいで、自分自身が金融資産として持っているものは、そんなにない場合が多いんですね。これからは自社株もあるし、自分でちゃんと高い給料をとって金融資産もある。自社株以外の株もある。となってきて、会社と個人がだんだん切り分けられる時代。ですから事業承継をしっかり考えないといけない、という意味です。

Q.確かに日本の経営者は会社にはお金があるが、個人にはないという人が多いようです。

A.そうですね、よくあるのが社長の家が実は会社のものだとか、別荘だといって持っているのが実は会社の持ち物だとか。

Q.そうなるといろいろ問題が出てくる?

A.ずっと家族内での経営が続いていくんだったら私はそれでいいと思うんです。ただ、これから会社を他の人に譲るとなったときに自分の家が会社の持ち物だったら困りますよね。

Q.EVERLASTINGのテーマはサスティナブル・ラグジュアリーで、エコ的な持続可能の意味はもちろん、事業においても永続性を求めたいと思っているのですが、その意味で事業承継はこのテーマそのものですね。

A.そうですね。創業者の思いをその時代時代で受け止めて継承されていくことが一番重要だと思います。それに今は中小企業オーナーの中でも、自社株の一部だけを残して、あとは一族以外に経営をゆだねる、いわゆる所有と経営の分離が出てきています。そうなるとこれからは資本家としてどういうように行動していくのかということも、われわれ日本人は学ばないといけませんね。

今日はいろいろとお話をありがとうございました

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