平野 龍一さん | フロムパーソナリティ― | プレミアムライフ -PREMIUM LIFE - |プレミアムライフ ハイソサエティライフのためのWebマガジン【Premium Life】

ギャラリストの可能性

ギャラリスト(画廊主)  平野 龍一さん

Photographs by Kai Kiuchi
平野古陶軒  http://www.kotoken.co.jp/

PROFILE

創業者である祖父の薫陶を受け、幼少期から李朝の飯椀を使って育った。
大器晩成を自負しつつ 2007年には京橋に平野古陶軒を開設し3代目を継承。
以来顧客に向き合う「客師」として独自の美意識を貫く。
専門は通好みの富裕層に支持される東洋陶磁とコンテンポラリーアート。
名門美術館、見識ある顧客筋から一目置かれる若手ギャラリスト。
美術品鑑定でも定評がある

Q.日本ではずっと、絵を買うのに百貨店で買ったり、外商に頼むという傾向があったように思います。アート購入に際しては本来どこで買うべきなのでしょう。

A.たしかに百貨店の催事などで絵画を 購入するのは日本特有の傾向です。本来はアートの専門分野を持ち信頼できるギャラリストから購入されるのがよりよいと思います。まずは展覧会やアートフェアをご覧になって気になった作品が展示されているギャラリーを訪れるのはいかがでしょうか?

Q.気軽に入るには敷居が高いギャラリーが多いですね。なかには閉鎖的なところもあります。良いギャラリーの見分け方は?

A.それはギャラリストの私も、良いギャラリーの見分け方のミシュランがあったらいいなと思います。私なりにお勧めしたい良いギャラリーの条件は3つあります。
ひとつめは1階にギャラリーがあることが望ましいでしょう。何故なら家賃は上層階の3倍位、ディーラー(取扱い業者)相手の商いでなく、顧客と向き合う覚悟がある証だからです。

Q.なるほど。2つ目の条件は?

A.主人の顔が見えるということ、いわゆる営業担当でない方がいることが望ましいです。その主人が選ばれた顧客の方々と接していくための最低限のマナーとして身綺麗にしていることは当然です。 カジュアルな時代ではありますが、ジーンズでの応対は好ましくないですね。

Q.3つ目は?

A.掛けてある作品にギャラリストの美意識が感じられることです。さらに店内を見渡しても在庫が置いていないこと、風呂敷やダンボール入りの絵が無造作に置いてあるのは、お客様を迎える体制にすらなっていません。気に入ったギャラリーが見つかったら、そちらの主人にいろいろなことを気軽に話しかけてみてください。

Q.コンテンポラリーアートの場合、アーティスト自身(作家)から購入するという方法もあるかと思いますが?

画像

A.コンテンポラリーアートは、現存する作家が今、活動しているわけですから、そういう購入方法もあるかもしれません。ですが、私が考えるギャラリストの役割とはアーティストと共同で創り上げるものなのです。アーティストはギャラリストとともに、発表の機会に向けて創作活動に集中し、全力を注いで創る。私の場合、アーティストがお願いした作品点数だけを作ったら困ります。その中からベストを選んでお客さまにお見せしたい。伝統工芸士であれば常に水準を満たす商品を作ることが仕事ですが、アーティストは、作品全てがパーフェクトでなくても当然です。各作品は出来不出来のヴォラティリティがあるのが当たり前なので、私は気を長くして、それを楽しむようにしています。話が本題から反れましたが、私の使命はアーティストが生涯創作活動だけでやってゆけるというように後ろ盾になる、いわば彼らの黒子です。アーティストが制作することに集中してもらうためにも、商いはギャラリストが担当すべきだと思います

Q.確かにアーティストが創作活動に集中するためには販売やプロデュースはギャラリストが担うのがよりよいのかもしれませんね。平野さんの場合、所属アーティストはどのように決めるのですか?

A.人柄です。古美術、コンテンポラリー、そのすべてが人の手を介して成されて継承されるものなので、私の場合、全てそれが判断基準の決め手になります。

Q.「家を作る時、建築家が勧めるアートを買うこともありますが、ギャラリーとインテリアの役割は?

A.内装部分を考えると「家のなかで使うもの」は建築家・インテリアデザイナーが選定、「家のなかにあっても使わないもの(鑑賞用)」はギャラリストが顧客の趣向にあわせてご推奨するというのが望ましいと思います。一例ですが、ある日本の方が箱根に素晴らしい別荘を御創りになったのですが、内装をすべて某海外ブランドに依頼したそうです。その住まいに海外の方が訪れた時、日本人としてのアイデンティティに触れる部分が少ないというのは残念な気が致します。私は世界中のオークションやギャラリーに出かけることが多いのですが、日本人ならではの目利きが培った技術力は世界中で定評があるのですよ。日本の古美術品の場合、桐の箱に収められて保存されることが多いので、海外のオークションカタログは全てJAPANESE WOODEN BOX と書かれていて、日本ブランドを象徴しています。日本人の目利きは世界水準であることをわかっていただきたいです。

Q.何故、東洋陶磁とコンテンポラリーという対照的なアートをご専門になさっているのですか?

A.どちらも作品の本質を見ることが大事だからです。作品の時代や材質、価格といった外見的な評価よりも、中身から見た作品の価値に焦点を当てて仕事をしていこうと思ったからです。実際に両方を合わせて飾るととても美しいのです。

Q.古美術のコレクターとは一体どんな方なのでしょうか?

A.ふたつのコレクターの傾向を申しましょう。ひとつは美術品の資産価値を考えたコレクターです。特に古美術は、世界中の富裕層が資産として「ゴールド」以上の価値があるものと評価されています。欧米の貴族や富裕層の中で美術品のコレクションを持たない方はおりません。このことに日本人が気づかないと、良質な古美術は全て海外に流出してしまうでしょうね。そして、古美術本来の美しさにとらわれた方々。悠久の時を経て、様々な人を介して伝わっていく作品の力強さは、人々の心を掴むにはあまりに容易い。その美しい作品に飾られた生活はきっと想像以上の価値があるものでしょう。

Q.どんな幼少期を過ごされましたか?

私は新日鉄の町、北九州で生まれ育ちました。色イメージで言うとグレイッシュ、海も水がよどんていて波が重かったです。
工場だらけだったので、未来的な街でもありました。そんな中でグレーによく合う赤が好きになり、幼少期から今に至るまでいつも自分にとっての「キーカラー」は赤です。ですから、現在のTwiggyの「看板」も赤なのです。東京の空も北九州の空と同じようなものですから・・・。と言っても東京に到着した時は........

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